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前回、「官報について」というコラムを寄稿してからというもの、インターネット版官報の利便性を褒め称えようと考えていたのですが、先日、インターネット版官報の弊害そのものともいえる事象を目撃し、また筆を執りました。
それは、或る掲示板の書き込みを偶然見て思ったことでした。
インターネット版官報には「破産宣告」が掲載されていますが、この掲載を引用して、破産宣告を受けた個人に対する誹謗中傷が行われていました。どこの掲示板かは敢えて伏せさせて頂きます。
今まで、私も行政書士という仕事から、自己破産の相談に来る方がおりましたが、その際には必ず「自己破産しても、戸籍や住民票には記載されません。官報には掲載されますが、官報を普段から購読したりする方は稀なので、ご安心ください。ただ身分証明書には記載されるので注意してください」と申しておりました。
しかし、インターネット版官報は、誰でも見れるという利便性がある一方で、破産者の社会復帰を阻害する可能性を生じてさせてしまっています。
ご存知の通り、戸籍や住民票に破産者である旨が記載されないのは破産者が社会復帰しやすくするための配慮だったはずです。
インターネット版官報は、極めて利便性がよいのは事実ですが、折角の破産者の社会復帰という現代日本社会の抱える問題に対する救済策を失わせる結果を誘引することになるのではないかと、不安に駆られました。
これから、私は破産の相談に来た方にこのように答えることになるでしょう。
「自己破産しても戸籍や住民票には記載されませんが、身分証明書に記載されます。また、現在はインターネット版官報があるのでくれぐれも注意が必要です。あなたが破産宣告を受けたことをどなたが見ているかわかりませんから・・・」
尚、戸籍や住民票は、一定の国家資格者が理由を開示して、職務上請求しないと入手できないですが、インターネット版官報を見るのに何の資格も必要ありませんので、破産者の情報を入手しにくくするというこれまでの法制度のあり方がここで見事に崩されてしまっていることに戸惑いを禁じ得ません。
確かに、官報に記載されている内容は、国民全体に発せられたものであり、開示されるのが当然の情報といえるかもしれません。
しかし、インターネット版官報が登場するまでは、微妙に保たれていた官報公告による情報開示と個人情報保護の見地との均衡が崩された点は事実だと思います。
私は疑問を感じざるを得ません。
何故、官報そのものをインターネットで公開する必要があったのだろうか?
何故、一部の情報のみをインターネットで公開するという柔軟性を持ち合わせなかったのだろうか?
確かに、官報は国民全体に発せられるものかもしれません。しかし、多くの国民にとって無駄とも言える情報がそこには多く詰まっています。
限られた利害関係者だけが見ればよいような情報が、まったく無関係な利害関係者ともいえないような者達にも自由に閲覧できるようになっています。
肝要なのは、利害関係者が必要になって求めた場合に、必要な情報が入手できるようにすることであって、何の利害も無い者達になんでもかんでも情報を与えるというのが「情報開示」の意味ではない筈です。
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当事務所は、お客様の個人情報の漏洩に細心の注意を払うため、お客様の記入するページには全てSSL(暗号化処置)を導入しております。 |
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私は、今後、このインターネット版官報が新たな社会問題を生み出すのではないかと危惧しています。
それは差別かもしれません。若しくは社会的抹殺という形で顕現するのかもしれません。
少なくとも現在(平成16年6月17日時点)で問題になっている、「平成15年4月から自己破産者を対象に官報掲載料金の支払いを求める通知の送付」事件で、既に社会問題の始まりを見出すことができないでしょうか?
そこで私は主張します。
「情報開示」とは無差別に無関係な者に情報を提供することではありません。必要な情報を必要とする者が自由に得られるようにするという意味であって、この概念が情報社会の根底にあるべきなのです。
インターネット版官報を運営する独立行政法人国立印刷局はその意味をもう一度再考して欲しいと思います。
読者の方はご存知でしょうか?
よく誤解されている話ですが、「官報」に記載された内容は必ずしも真実ではありません。自ら公告する形式の内容(例えば決算公告)についてはその真実性を保証していないのです。
何故なら、「事実証明能力」を持っていないのですから。
見たことがありませんか?掲載している内容については独立行政法人国立印刷局は一切の責任を負わないものとしますという記述を。
(H16年6月17日 行政書士 山田行展)
電子公告制度について(準備中)
(次回は、ついに全貌を現しつつある電子公告制度について語りたいと思います。既に原稿は出来上がっているのですが、掲載タイミングを測っていますので、いつ掲載するかわかりません)
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